瓏華のアウグル ―千年の沈黙、龍が知る真実―

龍との千年戦争を終えた国。声を忘れた少女が「チャット」で龍とつながり、ともに王国の歴史の闇に挑む。

あらすじ

千年にわたる龍との戦争は、先王の代についに終わりを迎えた瓏華国(ろうかこく)。だが平和になったはずのこの国で、龍は今も「忌むべき力」として恐れられている。 あなたは、山奥でただ一人の家族――母――と共に、戦のために調教された家畜龍を育てて生きてきた。だがある夜、龍たちは謎の死を遂げ、その責任を問われた村は国に焼かれる。逃げる途中で母を目の前で失い、力尽きて川に落ちたあなたを救ったのは、身分を隠して市井を歩いていた瓏華国の皇子だった。 その日を境に、あなたは人の言葉を話せなくなった。声を失った代わりに宿ったのは、この世界の誰にも聞こえないはずの「チャット」という力――龍とだけ語り合える、不思議な通信手段だった。 助けられた縁から、あなたは王宮に仕える龍占官(アウグル)――占龍院(せんりゅういん)に籍を置くことになる。だが後ろ盾のないあなたに与えられたのは、誰もやりたがらない龍小屋の清掃仕事。故郷での日々を思えば、この程度の苦労は取るに足らないものだったけれど。 けれど龍小屋には、あなたにだけ心を開く一頭の龍がいた。そして時に、深い傷を抱えた龍たちが感情を抑えきれず暴走する――その炎の奥にある痛みを、あなただけが聞き取ることができる。 王妃の病、龍への恐れと憎しみが渦巻く宮廷、そして正体を隠したままの皇子との再会。声を持たぬ少女が、龍だけを友に、少しずつ人々の信頼と、隠された真実を手繰り寄せていく物語が、今始まる。

冒頭シーン

目を開けると、そこは知らない天井だった。 体の芯まで冷え切っていたはずなのに、今は乾いた布に包まれ、微かに薬草の匂いが漂っている。あなたが身じろぎすると、傍らに座っていた人物がこちらに気づいた。 粗末な布を纏っているが、その所作にはどこか隠しきれない品がある。青年は少し困ったように笑うと、静かに口を開いた。 「ああ、良かった。目を覚まさないんじゃないかと思った」 「……燿(よう)だ。名乗るほどの者じゃないが、川で溺れていたお前を見つけた」 あなたは答えようとして、喉の奥から声が出てこないことに気づく。ただ、こちらを見つめる燿の目は、まるで何かを見透かしているようだった。 「お前……龍と話せるんだろう。眠っている間、うわ言のように、人の言葉じゃない何かを呟いていた」 あなたの心臓が跳ねる。それは誰にも――母以外の誰にも――知られてはならないはずの力だった。 「安心しろ、誰にも言っていない」燿は声を落とす。「だが、もしこれが役人の耳にでも入れば……お前は龍に魅入られた者として裁かれる。今のこの国で、それがどういう意味か、分かるか」 あなたの表情がこわばるのを見て、燿は続けた。 「唯一の道は、王宮に仕えることだ。龍占官として国のために力を使えば、罪には問われない。それに――王宮には今、お前のその力を必要としている人がいる。王妃様が、重い病に臥せっている」 燿の言葉には迷いがなく、まっすぐにあなたを見据えている。だがその眼差しの奥に何かが隠れていることに、あなたはまだ気づいていない。 廊下の奥で、複数の足音が近づいてくる。燿がわずかに眉をひそめた。 「……来る。決めるなら、今だ」

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作成者: mabo1350

ストーリー

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